私が2020年に小学校でプログラミング教育が義務教育化されることを知った時に、真っ先に気になったのが諸外国のプログラミング教育の実体についてでした。
なぜなら、プログラミングの義務教育化の流れを作るにあたって、文部科学省は世界の先進事例を調査し、その事例を元に日本教育の現場で「どんなプログラミング教育を」「どのように進めていくのか」についてまとめてくると考えたからです。
これらの諸外国の動向を踏まえて、日本の教育戦略として、プログラミング教育にどこまで注力するのか予想することができます。
今回は諸外国のプログラミング教育事情について、イギリス・ハンガリー・エストニアについてご紹介します。お時間のない方は、ハンガリーのプログラミング教育事情だけでもチェックすると、日本のプログラミング教育の遅れがどれほどのものか体感していただけると思います。
イギリスのプログラミング教育
イギリスでは、2014 年 9 月より教科「Computing」がスタートし、CS(Computer Science)、IT(Information Technology)、DL(Digital
Literacy)の 3 分野で構成されています。その中で、プログラミングは CS に分類され、アルゴリズムの理解、プログラムの作成とデバッグ、論理的推論によるプログラムの挙動予測、情報技術の安全な利用法、コンピュータネットワークの理解などに当てられています。
イギリスのプログラミング指導時間
指導時数は、一般的にプライマリースクールでは 1 時間 / 週(約 30 時間 / 年)程度となっています。(学校により異なる)
イギリスのプログラミング指導者体制
指導者は、プライマリースクールは、教科「Computing」における専任の教員はおらず、学級担任が指導しています。一方、セカンダリースクールは基本的に教科「Computing」については専任の教員が指導しており、専任教員が足りない場合は理科や数学の先生が兼任しています。
ハンガリーのプログラミング教育
ハンガリーでは、2003年からインターネット検索やペインティングと言ったITツールの使用を行う授業を小学1〜4年生を対象に行なっており、現在では「Informatika」を 1-12 年生で連続して行なっています。
「Informatika」は① IT ツールの利用法、②アプリケーションの知識、③問題解決のツールとテクニックとしての IT、④ 21 世紀におけるインフォコミュニケーション、⑤情報社会、⑥図書館情報学、という 6 つの分野から構成されています。
プログラミングに関しては特に③の「問題解決のツールとテクニックとしての IT」の授業において、論理的思考、アルゴリズム化、基本的な一連の手続き及び制御構造を学び、実際にコンピュータプログラムを作成しテストするところまで学びます。
また、異なる分野の問題や現象をプログラムを用いて学びシミュレーショ
ンし、アルゴリズムを理解してプログラムを作成する、及びアプローチ手法の開発において、問題解決も学ぶ機会があります。
学年別には 1-4 年生では簡単なアルゴリズムを習得し、5-6 年生では簡単なプログラムの実装、検証、7-8 年生ではステップバイステップの計画手順、9 年生以降では改良の原理まで学ぶカリキュラムが組まれており、世界でもプログラミング教育へ投資が積極的な国です。
ハンガリーのプログラミング指導時間
指導時数は、1-4 年生:0.5 時間 / 週、5-10 年生:2 時間 / 週、11-12 年生:3 時間 / 週という時間数になっています。
エストニアのプログラミング教育
エストニアでは、2012 年 9 月より教科「ProgeTiiger」がスタートし、2013 年に HITSA(Hariduse Infotehnoloogia Sihtasutus)に統合されました。選択教科である「Informatics(Informaatika)」の中でプログラミングが扱われており、ロボットプログラムやゲームプログラムを用いて、プログラミングに興味を持たせる活動に重点を置いています。
2015年1月時点では、今後プログラミング教育が義務教育化する予定はありませんでした。
エストニアのプログラミング指導時間
指導時数は、学校によって異なるため一般的な指導時間は把握できていません。
エストニアのプログラミング指導者体制
指導者は、プログラミング教育の専任教員がいる場合と、数学など他教科の教員がプログラミングを教える場合があります。