日本における高度ICT人材育成の現状と課題

現在、ICTは急速に発展をとげており、このような時代の流れに対応できる専門的人材の育成が急務となっています。しかし、日本において、高度ICT人材育成の仕組み作りは発展途上と言わざるをえません。そのため、高度ICT人材の不足感が否めないのが現状です。

高度ICT人材はどれほど不足しているのか?

IT人材の”量”不足の現状

情報処理推進機構(IPA)が行った2018年度調査によると、IT企業のIT人材の”量”に対して「大幅に不足している」と回答した企業は全体の29.5%、「やや不足している」と回答した企業は全体の61.0%%、合計すると「不足している」と回答した企業は全体の90.5%に登りました。

IT人材の”質”不足の現状

次に、IT企業のIT人材の”質”に対して「大幅に不足している」と回答した企業は全体の29.7%、「やや不足している」と回答した企業は全体の63.2%%、これらを合計すると「不足している」と回答した企業は全体の92.9%に登りました。

IT人材の活躍分野別にみた不足状況

では、より具体的にどのようなIT人材が不足しているのでしょうか。総務省が行った、IT人材の活躍分野別に不足状況を調べた調査結果をご紹介します。

  • プログラミング技術者が不足 75%
  • 設計/アーキテクトの人材が不足 71%
  • システム・コンサルタントが不足 63%
  • プロジェクトマネージャが不足 56%
  • 企画・要求分析者が不足 43%
  • システム管理・運用者が不足 20%

高度ICT利活用人材とは?

高度ICT利活用人材とは、ビッグデータなどICTの高度な利活用を通して、企業や組織の戦略を立案したり実施遂行できる人材のことを指しています。

それまで活躍してきた技術系IC人材は、非クラウド環境で業務を電子化することがメインでしたが、高度ICT利活用人材は、クラウドやビッグデータを活用してよりスピーディに、より質の高い戦略の立案や実行が可能になります。

国が進める「高度ICT利活用人材育成プログラム」への期待

総務省が進める「高度ICT利活用人材育成プログラム開発事業」は、ICT人材育成の仕組みを作ることによって、日本における社会的課題の解決や日本の国際競争力を向上させること、また生産性の向上などが期待されています。

高度ICT人材育成の課題

高度ICT人材育成はまだ始まったばかりです。高度ICT人材が育てば、企業だけでなく日本の国際競争力向上にもつながるたいへん強力な影響力を持つことになりますが、残念ながら高度ICT人材が必要数育つには課題がいくつかあります。

高度ICT人材の活用事例が少ない

そもそも高度ICT人材がどのような人材で、どんな影響力があるかについて完全に把握できている経営者はまだそれほど多いとは言えません。そのため、高度ICT人材育成に投資する意思決定が遅れているのが現状です。

高度ICT人材育成カリキュラムが広がらない

高度ICT人材育成の重要性が経営層で認識されていなければ、高度ICT人材育成のカリキュラムへの投資はされないままに終わります。その結果、高度ICT人材育成カリキュラムが広がりにくいという状況が発生しています。

高度ICT人材を支えるICT人材の母数が少ない

高度ICT人材を発掘するためには、子供の頃からICTスキルや知識を育てることによってICT人材の裾野を広げていく必要があります。この重要性に気づいている海外の国々では、義務教育としてICT教育がすでにスタートしている国も多数あります。

日本は、2020年に小学校でのプログラミング教育がようやくスタートしますが、やや遅れをとっていると言えるでしょう。