AIがもたらす未来ー自動車産業ー

自動車の自動運転と聞いて、そう驚く人もいなくなってきています。実際に、東京オリンピックが行われる2020年には、公共交通手段であるバスなどの一部は、自動運転で走行されることが検討されており、AI技術の一端を担っている自動運転技術はもう身近な存在になりつつあります。

そんな時流の中、AI技術を使った自動運転技術が今後の自動車産業にどのような影響を与えていくのか、また自動車の産業構造がどのように変貌していくと考えられているのか、について様々なところで議論されています。

なぜなら、日本の産業を支える車業界で業界トップクラスの企業が、その規模を維持できなくなる事態がAI技術(もっと言えば自動運転技術)によって引き起こされる可能性が示唆されているからです。これは、車産業を担っている日本企業、強いては日本経済にとって大きな脅威と言えるでしょう。この脅威を見据えて、今後のビジネスモデルや産業構造の変貌を捉えたものだけが生き残れる・・・そんな時代がすぐそこまで来ているのです。

自動運転が当たり前になるために

自動運転が当たり前の世の中になるためには、いくつかのステップを踏む必要があります。一つは、自動運転でも安全に走行できる技術の革新です。この技術革新を提供する企業がどこになるのか、どの企業がこの市場のポジションを取るのかは、まだ神のみぞ知るところですが、実際にAI技術の最先端で活躍する人の中では、幾つかのシナリオが出来上がっているようです。

安全な自動運転技術の市場を狙う世界の企業

自動車の自動運転が世の中にとって当たり前になるためには、安全な自動運転技術が開発される必要があります。現在、世界中で安全な自動運転技術の競争が起こっており、今まで自動車産業に全く関係の無かったGoogleやFacebook、また自動車業界ではまだ新人にあたるテスラモーターなどが「自動運転技術(AI技術)」のために日々実験を行い、安心安全に使える自動運転技術に磨きをかけています。

これらの技術を「より早く、安全に、安定的に提供」できれば、自動運転技術の市場を取ることができます。そのためには、AI技術を支えるアルゴリズム(コンピューターへの命令内容)×自動車のメカ技術×自動運転に関するデータ量において1番を取っていく必要があると言われています。

AI技術を支える人材の囲い込み

GoogleによるAI人材の囲い込み

自動運転技術を支えるAI技術(よいアルゴリズム)は、それを作れる人材の量・質という要素を欠かすことができません。そこで、Googleでは人工知能を専門とする専門家の囲い込みに余念がありません。現在、Googleでは1000人規模でAI技術者が活躍しています。これは、一つの大学に在学する人工知能の専門家数をはるかに超えています。

FacebookによるAI人材の囲い込み

次に有名な企業はFacebookです。Facebookに在籍する人工知能を専門とする専門家の数は500人単位と言われています。これだけ、世界をリードする企業が新しい産業革命を担う人工知能を支える人材の囲い込みをしている中、日本企業は遅れをとっていると言わざるを得ません。

このようにAI人材の囲い込みの事例を一つとっても、自動運転技術を先行する企業がどこなるのか自ずと決まってくるのでは・・・という話も出ています。いうまでもなく、今まで自動車業界を牽引してきた日本企業の名前が挙がることはありません。これが、どのような打撃を日本に与えるのか、想像するだけで怖くなるほどです。

日本でAI技術者の育成が本格始動

このような背景もあり、日本でも、自動運転技術(AI技術)を飛躍的に向上させると期待されているモデルとなっている「ディープラーニング」に特化したディープラーニング協会というものが2017年6月1日に設立されました。このディープラーニング協会では、AIに関する人材育成、またその人材をマネジメントする経営者層のAIリテラシーを向上させることを目的の一つとして掲げています。これらの目的を達成するために、ディープラーニングに関する検定を行っており、徐々にAI技術が日本の世の中に浸透する活動を進めています。

一般社団法人日本ディープラーニング協会