子供の独学力を育む方法(その③:段取り力)

前回前々回に続き、3つ目の要素である子供の独学力を育む方法についてご紹介します。今回は、段取り力についてです。

独学力の要素で最も重要な「段取り力」

最後に紹介する独学力の要素は段取り力です。

社会に出ると、どんなに素晴らしいアウトプットも期限内に仕上げられないとただの自己満足で終わってしまいます。そのため、独学力を鍛える上で「段取り力」は非常に重要なポイントになります。

しかし、一般的に小学生の場合、自分の意思で期日を設けて新しいことを計画・実行する機会はそれほど多くありません。そもそも自分の意思で何かを始めようとする小学生がレアケースなのではないかと思います。なぜでしょうか。

それは、小学校などで画一的な教育がメインになっていることが影響していると思われます。一人一人の興味関心ごとに授業のペースや内容を最適化する手段がないために、クラス全体の平均的ペースや学習指導要領のペースが優先され、個々の子供達にフォーカスできないためです。

段取り力を鍛える方法

家庭ですぐできる段取り力を鍛える方法についてご紹介します。

段取り力が鍛えられる方法

1)旅行プランを子供に作ってもらう

夏休みやGWを利用して旅行に行かれるご家庭も多いと思います。そんな時は、1週間前から旅行ガイドを用意して旅行プランをお子さんに作ってもらいましょう。その際に、以下の点について決めてもらうようにしましょう。

  • 目的:みんなが楽しめる旅行にする
  • 場所:どこに行くと誰が喜ぶのか
  • 時間:どの時間帯に行くと一番楽しめるか(混んでいる時間帯を避けられるか、ハッピーアワーなど料金がお得なプランがあるか等)
  • お金:予算内で旅行プランを作る

この旅行プランを作る過程で、目的に沿った場所の選定ができるようになります。また、自分だけでなく家族全員が楽しめる旅行について意識が向くようになり、かつお金について考えるようになります。このような経験を繰り返すことによって、自分以外の人の視点やお金といったことまで視野を広げて物事を考えるようになります。

また、旅行から帰ったら、撮った写真やパンフレットなどをまとめてみると良いでしょう。旅行の思い出を振り返るだけでなく、旅行プランのどの部分に改善があったか、次の旅行はどんな点を改善できるかについて話し合ったりまとめたりすると、段取り経験値が積めておすすめです。

また、旅行記としてインターネットで公開できると、たくさんの方の目に触れて社会からのフィードバックが得られておすすめです。家族以外の人から感謝される経験は、何物にも代えがたいモチベーション促進剤になります。逆に、改善点についてもフィードバックされることで、自分のアウトプットをより客観的に見れるようになります。これらの経験が、お子さんの視野をさらに広げることにつながります。

2)イベントに作り手として参加する

地域イベント(お祭りなど)に作り手として参加すると段取り力が培われます。たとえば、お祭りの日に出し物をしたり、出店すのもいいでしょう。イベントに参加するためには、「いつまでにどんなことをしなければいけないのか」を考える必要があります。この経験が段取り力を育むのにとても適しているのです。

このイベント参加は、学校の学芸会参加と重複する要素がありますが、大きく異なる点があります。それは以下の点です。

  • 自分で目的とやることを決める・・・学芸会などは、出し物の内容は学校サイドが決めることがほとんどです。一方でイベント参加をする場合は、自分自身で何をするのか、どうしてそれをやりたいのか、など全て自分で決める必要があります。この自分で1から考えて決めると言う行為が、段取り力におおきく影響を及ぼします。
  • 自分で決めたことに責任を持つ・・・やると決めたことに責任が生じていることを意識するようになります。自分で決めているので、やったことに対して自分にフィードバックが返ってきます。このように言い訳できない環境に追いやることが、大きく成長を促します。
  • 社会の目に触れる・・・家庭や学校以外の人の目に触れることで、お子さんのモチベーションに大きく影響します。重要なのは、あえて失敗する経験をさせることにあると感じています。それを乗り越える経験をすることこそ、次回へのモチベーションに繋がります。

以上の点を踏まえると、段取り力が飛躍的に伸びてきます。ついつい大人が口出ししそうになりますが、危険なこと・他人に迷惑がかかる以外のことについてはできるだけ手を出さないようにしましょう。

3)コンテストに出場してみる

世の中には、子供が参加できるコンテストが多く存在します。これらのコンテストに挑戦するのは、段取り力を鍛えるのにおすすめです。その理由をいくつかご紹介します。

まず第一に、無料で参加できて得るものが多いという点です。ノーリスクハイリターンと言えます。いつまでに、何をすればいいのかという大きな目標に向けて、日々のTODOをスケジュールに落とし込む経験、実際に計画通りにTODOを済ませるために自分の行動をどのようにコントロールしなければいけないのか、自分の考え方のクセなど、自信を客観的に観察する経験を積むことができます。

しかし注意しなければならないのは、これらの経験を単発で終わらせると習慣化しないという点です。つまり、一度や二度経験しただけでは、段取り力が身についているとは言えないということです。たとえ入賞しなくてもなんども挑戦することで、段取り力は習慣化し、目標に向かって自分自身でスケジューリング・自己制御できるようになります。そして、この繰り返し挑戦する経験を通して、レジリエンス(ストレスなどにさらされてもそれを克服する力)が育まれ、打たれ強い人間になることができます。

ただ、このスケジュール管理や実際にスケジュール通りに進められているかを確認し、うまくモチベートするのは簡単ではありません。

私のプログラミング教室では、独学力を身につけるためににも、プログラミングコンテスト出場を一つのゴールにしています。これらのコンテストを探し、繰り返し挑戦する機会を通して段取り力が身についてきます。また、入賞できなかった原因分析についても一緒に行うため、原因と対策を明確化する経験も積むことができます。

これらの経験は、大人になってからも大いに役立つことは言うまでもありません。仕事だけでなく、プライベートな問題を解決するときにも大変役に立ちます。言い換えれば、独学力は「人生をよりよく生き抜くための術」ともいえるでしょう。

子供の独学力を育む方法(その②:情報収集する力)

子供の独学力を育む方法(その①:目的意識を持つ)でも紹介しましたが、独学力は3つの要素で成り立っています。

  • “何かやりたい”という目的意識を持つこと
  • 情報収集する力
  • 限られた時間の中で必要な知識を習得する段取り力(スケジュール管理能力・遂行力)

今回は、その2つ目にあたる「目的のために必要な知識は何かを把握し情報収集する力」についてご紹介したいと思います。

情報収集能力の身につけ方

インターネットでどんな情報にもアクセスしやすくなった今、情報収集能力=ネットリサーチ力+質問力と分解することができます。今回はネットリサーチ力についてご紹介します。

ネットリサーチ力は、どのサイトに正しい情報や目的に合う情報が集まっているのかを探せる能力を指します。もっと突き詰めると、何が無駄で正確ではない情報なのかを見分ける力と言えます。この能力は、2つの方法で伸ばすことができます。

1)リサーチの経験を積む

一つは「リサーチの経験を積むこと」です。初めてネットリサーチをする場合は、以下のステップを踏むことをお勧めします。できれば、リサーチ結果をノートなどで残して後から見返せるようにしておくと、リサーチ力の向上を実感できてお勧めします。

  1. お題を決める(何のためのリサーチなのかを明確にする)
  2. 仮説を立てる(全然見当がつかないことに対するリサーチなのか、予備知識があり仮説を立てているのかを事前に明確にしておくとリサーチ内容の質がアップします)
  3. 時間を決める(時間を区切ることでネットリサーチの質が上がります)
  4. リサーチするサイトを限定する(初めてのネットリサーチの場合、ある程度、見当のつくサイトをピックアップしておくのも手です)
  5. 参照した情報元サイトのURLと参考箇所を残す(情報元を明示することでリサーチ内容の信憑性が上がります)
  6. リサーチから導いた結論を書き出す(当初の目的にあった結論が出ているかチェックします。もし目的からずれた結論になっていた場合は、何を改善できるのかリストアップし、次回のリサーチに生かします)

2)リサーチ力の高い人から盗むこと

そしてもう一つが「リサーチ力の高い人からその方法を盗むこと」です。

この方法は、「リサーチの本から盗む方法」と「年齢の近いお子さん同士で教えう・競争させる」などの方法があります。

リサーチ関連の本から盗む方法は、出来るだけお子さんに本を選ばせるようにしてください。難しすぎたり、リサーチに関連する本でないものを選んでしまうこともあると思いますが、そこはぐっとこらえてその失敗をお子さん自身に体感させることが次に生かされます。

年齢の近いお子さん同士で教え合う・競い合う方法でおすすめなのは、ご兄弟で一つのテーマについて調べ合う方法です。

ネットリサーチをバカにしない

リサーチ力を伸ばす方法として2つの方法(ネットリサーチの経験を積む・リサーチ力の高い人から盗む)をご紹介しましたが、この二つの経験をバランスよく積むことが重要です。

もし、リサーチのの経験を積むことに偏ってしまうと井の中の蛙になりかねません。一方で、リサーチ力の高い人から盗むことだけでは他人依存のスキルになり、工夫すること・改善することに欠けてしまいます。

何れにせよ、ネットリサーチ力はこれからの社会を生きる上で非常に有力です。この機会に、子供達のネットリサーチ力について考え、できることから初めてみてはいかがでしょうか。

子供のネット依存を危惧する前に

今のお子さんたちは、生まれた時からスマートフォンが身近な存在です。

そこで、スマホ依存症になることを回避するためやネット社会の様々なリスクからお子さんを守るために、お子さんがデジタル機器を使うのを遠ざけているご家庭もあると思います。

しかし、すでに到来しているデジタル社会を生き抜くためには、ネットの使い方やリスクを早い段階からしっかりと知る必要があると感じています。

なぜなら、ネット社会のリスクから子供たち自身が守る術を学び習得することが、本当の意味でネット社会のリスクからお子さんを守ることに繋がるからです。また、ネットリサーチ力をつけることで、ネット上にある上質な情報に簡単にアクセスでき、それによってお子さんの視野を低コストで広げるができます。

しかし、闇雲にネットリサーチをさせるわけにもいかない、ネット上のリスクにどんなものがありどう防いでいけばいいかわかない、そんな時間がない、というご家庭がほとんどだと思います。

そういったご家庭でぜひ利用したいのが、お子さんのネット依存を回避するために開発されたアプリなどです。時間制限できるものや、閲覧するサイトを制限できるものまで様々なものが公開されています。

ご家庭にあったアプリや仕組みをうまく利用して、お子さんが本当の意味でネット社会を安心して利用できるよう促していきたいものです。

子供の独学力を育む方法(その①:目的意識を持つ)

独学力は「自分で学ぶ力」のことです。この独学力は、問題解決能力に直結します。

プログラミングコンテストを目指す教室any

独学力は3つの要素から成り立っています。

一つ目は「”何かやりたい”という目的意識を持つこと」、二つ目は「目的のために必要な知識は何かを把握し情報収集する力」、そして最後に「必要な知識を限られた時間の中で習得する段取り力(スケジュール管理能力・遂行力)」です。

今回はこの3つの要素の中から、「目的意識を持つ」にフォーカスを当ててご紹介します。

子供の目的意識を奪う「管理主義」

あれしなさい、これしなさいと言われて育った子供は、自分が何をやりたいのか、何に困っているのかと言う問題発見能力が乏しいように感じます。

私自身の幼少期は、両親が商売をしていたり、弟が生まれつき病気だったこともあり、放任主義で育ちました。勉強しろと言われたことは一度もなく、興味の赴くままに生活していた気がします。この経験が私の好奇心と行動力に影響したと感じています。

子供が主体となって生活の様々なことを自ら決めると、その判断に成功・失敗が伴い、次に活かせる知恵になります。この経験を繰り返し積むことが、独学力を育むポイントになります。

本物・プロに触れて「やりたい!」を引き出す

では、子供の主体性を促すために親ができることはないのでしょうか。

その答えは「No」です。一つの方法をご紹介します。それは、お子さんが「かっこいい!」「可愛い!」「すごい!」と思う人を見つけるフォローをすることです。もしすでにお子さんが「かっこいい!」「可愛い!」「すごい!」と思う人がいるのであれば、主体性を持たせてあげる絶好のチャンスです。なぜなら、彼らはすでに憧れの存在に近づきたいとモチベートされており、近く方法を知るきっかけがあれば、自ら勝手に学び始めます。

もし憧れの存在がいないという場合は、「本物に触れる・プロに会う」機会を提示する方法をお勧めします。例えば、歴史的人物や世界的に有名な絵画などが挙げられます。これらの人物・物は、今まで人を魅了し続けてきた要素があるため子供が感動する確率が高くなります。「少しハードルが高いな・・・」と思われる場合は、親御さんの好きなアーティストや作家さん、研究者などでも構いません。そのアーティストや作家さんなどの素晴らしいところを「お母さんは、この人のこんなところがすごいと思うんだよね」とお子さんに紹介してみてください。親子のコミュニケーションの中で、様々な価値観や哲学があることに触れ、人生に興味を持つきっかけになると思います。この「人生への興味」が、様々な目的意識を育ててくれます。

「視野を広げ、本質的に物事を見抜ける能力」を養える簡単な方法

良くも悪くも、子供達はコミュニティ(特に友達)に影響されるものです。そこで、考えたいのは「子供のコミュニティを学校だけに頼るリスク」です。地域や学力だけでフィルタリングされたコミュニティだけが、お子さんの興味のある分野での視野を広げるとは限らないからです。

そこでうまく利用したいのが塾や習い事、ボランティアです。

ボランティア活動は無料で間口が広げられており、多様な年齢層であるため、お子さんの視野を広げることができ魅力的です。

塾や習い事は、お子さんの興味のある分野において同年代で少しマニアック(より深い知識や経験を持つ)友達コミュニティが得られることが魅力です。

様々なコミュニティでの新しい仲間との交流を通して、人生への興味喚起を促してみてはいかがでしょうか。これらの経験が、目的意識を持って本質的に物事をみれる能力開発に大いに役立ってくれます。