教育と子どもたちの未来

今までの教育環境は、子供たちの個性に沿った授業が展開しづらい環境でした。しかし、AIやICTなどの技術が教育現場に導入されることによって、一人一人にあった教育環境が徐々に整ってくるでしょう。

プログラミングコンテストを目指す教室any

教師の方が持つジレンマ

教育現場で働く教師の方々は、授業+教育指導要領の改定(追加され続ける授業内容)+部活指導で忙殺されているのが現状ではないでしょうか。そんな中、授業についていけない子、授業がつまらなくて飽きている子へのケアができないことへのジレンマを抱えていると感じています。これは教師の問題ではなく、教育現場のシステムの問題です。

しかし今後はICTが導入されることで、この問題は解決に向かうでしょう。なぜならICTの導入により、個人に最適化された教育が提供され始めるからです。

ICTが可能にするオーダーメイド教育

これらの教育現場の変化により、今までの平均化した授業では対応できなかった個々人の学習ニーズへの対応が可能になります。そうなると、子供たちの学力は全体的にボトムアップするでしょう。

しかしながら、このような未来がすぐ実現できるかというと、なかなか難しい現状が浮かび上がります。

例えば、公立学校でのwifi普及率は10%台です。ワードやエクセルなどのソフトが入っているパソコンを使用する教師の方々も職員室で数えるほどしかいない現場があります。

これらの例を見ても、授業で当たり前にITが使えるようになるまでには様々な壁が立ちはだかっているようです。しかし、子供の成長は待ってはくれません。

ICTの得意なこと、ICTの苦手なこと

少し話を戻しましょう。

ICTによる教育のカスタマイズ提供が可能になると、「教師の役割はどのように変わっていくのか」という声をよく耳にします。

実は、ICTは認知能力の向上には効果的ですが、非認知能力の向上には不向きであることが様々なデータからわかってきました。つまり、ICTが教育現場で活用され始める時代になると、教師は非認知能力をサポートすることに注力できるようになると考えられています。

変化の大きな時代を生き抜く力とは?

ちなみに非認知能力は、これからの変化の大きな時代を生き抜く力として注目されています。我慢する力、やり抜く力、自分で計画する力などを指す非認知能力の伸びが、今後ますます重要性を増していくということになります。

例えば、大検を受けて大学に入学した生徒と高校を経て大学に入学した生徒の学力を平均化(つまりどちらのグループも、知性が同じようになるようにした場合)した時に、この2つのグループのその後の年収を調査すると、高校を経て大学に入学したグループの方が年収が高くなることがわかりました。

この事例から、知識があること=生き抜く力があることにはならないことがわかります。これからの時代を生き抜くためには、非認知能力+時代に即した知識が必要です。そして、非認知能力には、どうやらコミュニティの中でコミュニケーションする経験が影響を及ぼしていることがわかってきています。

非認知能力を伸ばすには?

まずは、管理されない環境で安心して学べることが重要だと思います。

管理されない環境

管理されない環境とは、具体的には「子供自身が目標を掲げ、自分で計画して、自分をコントロールする」と言うことです。つまり、親に管理されるのではなく、自分で管理すると言うことです。

こんなことを言うと、「いやいや、子供が自分でやってくれたら、親は(先生は)苦労しません」と言う声が挙がりそうでドキドキしていますが、自律できていない子供に最も多いのは「やり方がわかっていない」または「モチベートされていない」と言うケースです。

モチベートされている場合は、自律するまであともう一歩まで来ています。問題は、モチベートされていない場合です。子供のやる気を引き出す要素については、こちらに書いてみたので是非合わせて読んでみてください。

STEM教育

STEM教育とは?

Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)Mathematics(数学)の頭文字をとったもので、高度な STEM リテラシーを備えた人材の育成を目的とした教育を指します。

アメリカでは、国家能力の中枢を担っており、今後も世界の政財界をリードし続けるためにSTEM教育を官民共同で強化していくことを2013年の「FEDERAL SCIENCE, TECHNOLOGY, ENGINEERING, AND MATHEMATICS (STEM) EDUCATION 5-YEAR STRATEGIC PLAN」で公表しています。

STEM教育が重要視される理由

STEM人材の不足を補うために

一つはSTEM人材の不足を補うためです。具体的には、2010 年から 2020 年までの間に、STEM 関連の職業需要は全体で 14%増加すると予想されています。特に、システムソフトウェア関連の職業については 32%、医療科学関連は 36%、更に生物医工学関連においては62%の増加が予測されているにも関わらず、この10 年間の STEM 分野学位取得者が 100万人不足することが課題とされていました。

将来の問題解決に必要なスキルだから

また、2011年にマイクロソフト社がSTEM教育を受けている大学生とK-12※世代の親を対象に行った調査では、「STEMは世界の深刻な問題を解決するのに役立つ」と回答した人が90%以上いることがわかっています。

この調査結果からも、21世紀を生き抜くために必要な力としてSTEM教育が注目されていることが伺えます。

H28年度_国際学術交流研修海外実務研修報告集.indd より

※K-12…アメリカにおける「幼稚園の年長(KindergartenのK)から始まり高等学校を卒業するまでの13年間の教育期間」のこと

wikipedia

STEM教育と謳っているプログラム

では、実際にSTEM教育をやっていると謳った教室やプログラムを調べてみると、STEMを全てカバーしている教育プログラムはまだ存在していないように感じます。

その背景には、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)Mathematics(数学)を一手に教えられる人材がいないという事情があります。

私の感覚では、ロボットプログラミングなどを使ってTechnology(技術)、Engineering(工学)まではできていても、Mathematics(数学)を使ってより効率的にプログラミングをしたり、学んだプログラミングスキルをScience(科学)まで生かすという動きまでは行けていないというのが現状ではないでしょうか。

STEM教育をオールカバーするには、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)Mathematics(数学)をマスターし、かつ順序立てて子供達の理解度に合わせて提供する力が必要です。

現在はプログラミング教育が注目を集めているので、今プログラミングを学んだ子供達が成長してあと5年もすれば、STEM教育を体系立てて学べる環境が整ってくるのではないかと思います。

海外のプログラミング教育

私が2020年に小学校でプログラミング教育が義務教育化されることを知った時に、真っ先に気になったのが諸外国のプログラミング教育の実体についてでした。

なぜなら、プログラミングの義務教育化の流れを作るにあたって、文部科学省は世界の先進事例を調査し、その事例を元に日本教育の現場で「どんなプログラミング教育を」「どのように進めていくのか」についてまとめてくると考えたからです。

これらの諸外国の動向を踏まえて、日本の教育戦略として、プログラミング教育にどこまで注力するのか予想することができます。

今回は諸外国のプログラミング教育事情について、イギリス・ハンガリー・エストニアについてご紹介します。お時間のない方は、ハンガリーのプログラミング教育事情だけでもチェックすると、日本のプログラミング教育の遅れがどれほどのものか体感していただけると思います。

イギリスのプログラミング教育

Google Map より

イギリスでは、2014 年 9 月より教科「Computing」がスタートし、CS(Computer Science)、IT(Information Technology)、DL(Digital
Literacy)の 3 分野で構成されています。その中で、プログラミングは CS に分類され、アルゴリズムの理解、プログラムの作成とデバッグ、論理的推論によるプログラムの挙動予測、情報技術の安全な利用法、コンピュータネットワークの理解などに当てられています。

イギリスのプログラミング指導時間

指導時数は、一般的にプライマリースクールでは 1 時間 / 週(約 30 時間 / 年)程度となっています。(学校により異なる)

イギリスのプログラミング指導者体制

指導者は、プライマリースクールは、教科「Computing」における専任の教員はおらず、学級担任が指導しています。一方、セカンダリースクールは基本的に教科「Computing」については専任の教員が指導しており、専任教員が足りない場合は理科や数学の先生が兼任しています。

「諸外国におけるプログラミング教育に関する調査研究」報告書01より

ハンガリーのプログラミング教育

ハンガリーのプログラミング教育

ハンガリーでは、2003年からインターネット検索やペインティングと言ったITツールの使用を行う授業を小学1〜4年生を対象に行なっており、現在では「Informatika」を 1-12 年生で連続して行なっています。

「Informatika」は① IT ツールの利用法、②アプリケーションの知識、③問題解決のツールとテクニックとしての IT、④ 21 世紀におけるインフォコミュニケーション、⑤情報社会、⑥図書館情報学、という 6 つの分野から構成されています。

プログラミングに関しては特に③の「問題解決のツールとテクニックとしての IT」の授業において、論理的思考、アルゴリズム化、基本的な一連の手続き及び制御構造を学び、実際にコンピュータプログラムを作成しテストするところまで学びます。

また、異なる分野の問題や現象をプログラムを用いて学びシミュレーショ
ンし、アルゴリズムを理解してプログラムを作成する、及びアプローチ手法の開発において、問題解決も学ぶ機会があります。

学年別には 1-4 年生では簡単なアルゴリズムを習得し、5-6 年生では簡単なプログラムの実装、検証、7-8 年生ではステップバイステップの計画手順、9 年生以降では改良の原理まで学ぶカリキュラムが組まれており、世界でもプログラミング教育へ投資が積極的な国です。

ハンガリーのプログラミング指導時間

指導時数は、1-4 年生:0.5 時間 / 週、5-10 年生:2 時間 / 週、11-12 年生:3 時間 / 週という時間数になっています。

エストニアのプログラミング教育

エストニア

エストニアでは、2012 年 9 月より教科「ProgeTiiger」がスタートし、2013 年に HITSA(Hariduse Infotehnoloogia Sihtasutus)に統合されました。選択教科である「Informatics(Informaatika)」の中でプログラミングが扱われており、ロボットプログラムゲームプログラムを用いて、プログラミングに興味を持たせる活動に重点を置いています。

2015年1月時点では、今後プログラミング教育が義務教育化する予定はありませんでした。

エストニアのプログラミング指導時間

指導時数は、学校によって異なるため一般的な指導時間は把握できていません。

エストニアのプログラミング指導者体制

指導者は、プログラミング教育の専任教員がいる場合と、数学など他教科の教員がプログラミングを教える場合があります。

IE-Schoolとは?(中学校・高校のプログラミング教育事例)

IE-Schoolとして指定されている小学校6校のプログラミング教育事例を紹介しましたが、そこでは様々な成果と課題が浮き彫りになっていました。

ここでは、中学校・高校で指定されている8校で先行して行われているプログラミング教育の内容と、実施した後に見えてきた成果・課題についてご紹介します。

  • 静岡英和女学院中学校・高等学校
  • 古河市立三和東中学校
  • 筑波大学附属駒場中学校
  • つくば市立春日学園義務教育学校
  • 神奈川県立住吉高等学校
  • 早稲田大学高等学院
  • 北海道浦河高等学校
  • 宮城県多賀城高等学校

静岡英和女学院中学校・高等学校 

プログラミング教育の内容

静岡英和女学院中学校・高等学校では、中学校2年生を対象に総合的な学習の「地域について考えよう」というテーマでプログラミング教育が導入されました。

地域について調べる際に、タブレットを使用して情報取集し、発表する際にプレゼンテーションアプリを使用しました。

プログラミング教育の成果

静岡英和女学院中学校・高等学校で実施されたプログラミング授業の成果として、以下の点が報告されています。

  • 全教員が同じ方向を向いて情報活用能力の育成ができた点
  • 情報モラルやセキュリティに関して、保護者からタブレットなどの使用に関するヒアリング・生徒からのSNS情報モラルに関するアンケートから年齢に応じた内容を明確化でき、年間計画に組み込んで実施することができた点
  • タブレットなどのICT機器を利用することによる教員負担の軽減
  • タブレットなどに不慣れな教員に対してICT支援員がフォローしたことで、ICT機器を利用した授業の展開ができた点

プログラミング教育の課題

一方で、プログラミング教育の課題として挙げているのは、以下の点でした。

  • ICTを活用してさらに情報活用能力を育成する方法論を展開していく点
  • 情報モラルの年間計画に関しては、より専門的な見解を組入れるために静岡大学と連携していく点

古河市立三和東中学校 

プログラミング教育の内容

古河市立三和東中学校では、中学校1年生を対象に数学の「量の変化と比例、反比例」の時間を使ってプログラミング教育が導入されました。

具体的には、(1)アプリを使って図やグラフを作成する(2)作成した図やグラフをアプリを使って共有・比較する(3)お互いの表やグラフの相違点・共通点を見つけ考察する、といったプログラミング教育が実施されました。

プログラミング教育の成果

古河市立三和東中学校で実施されたプログラミング授業の成果として、以下の点が報告されています。

  • カリキュラムと発達段階に合わせた情報活用能力を明確化し、年間指導計画に落とし込んで実践できた点
  • 情報ネットワークやICT機器といったハード面に関して、企業の協力を得て整えることができた点
  • アプリの導入によって、アダプティブな授業展開・協働的な授業展開が可能になった点
  • 環境整備によって、生徒がPCやタブレットなどのICT機器に触れる時間が増え、情報活用能力の育成に大きく寄与している点
  • 有識者やNPO法人といった外部要員がプログラミング教育の現場に入ったことによって、より専門的なプログラミング授業を行うことができた点
  • タブレットなどのICT機器を利用することによる教員負担の軽減
  • タブレットなどに不慣れな教員に対してICT支援員がフォローしたことで、ICT機器を利用した授業の展開ができた点

プログラミング教育の課題

一方で、プログラミング教育の課題として挙げているのは、以下の点でした。

  • 他の学校と連携して、義務教育期間である9年間を通してプログラミング教育の研究を展開していく点
  • 生徒の発達段階に合わせた情報モラルの展開だけでなく、保護者に向けた情報発信もしていく点
  • 小学校・中学校でそれぞれに育成すべき情報活用能力を見極めて授業に取り入れていく点
  • 現在、ICT支援員に生徒と同じPC環境が整っておらず、ICT支援員がアプリの内容を熟知できていないため、ICT機器の基本的な操作スキルの支援のみに留まってしまっている点

筑波大学附属駒場中学校 

プログラミング教育の内容

筑波大学附属駒場中学校では、元来、クラウド環境を利用した学習を行っており、蓄積された活動記録や成果物はポートフォリオに落とし込み、その後の学習にも行かせるような素地ができていました。

そんな中、IE-Schoolに指定された年度は、中学校3年生を対象に総合的な学習で行った「物理パラメータとアルゴリズムの改良に着目した着陸ゲームの開発」の時間を使ってプログラミング教育が導入されました。

具体的には、(1)ゲームのアルゴリズムと変数を理解する(2)プログラムの仕組み理解(3)ゲーム実行のための合理的な方法を知る(4)プログラミングを使用て技術的な問題解決する、といったプログラミング教育が実施されました。

プログラミング教育の成果

筑波大学附属駒場中学校で実施されたプログラミング授業の成果として、以下の点が報告されています。

  • 次年度実施の単元開発、授業設計、教材開発(インタフェースの改良、ライントレースカーの改良、制御モジュールの改良)ができた点
  • 数学科(代数)、技術・家庭科、情報科、総合的学習の時間、特別活動に絞り、資質・能力ベースの情報活用能力の整理ができた点

プログラミング教育の課題

一方で、プログラミング教育の課題として挙げているのは、以下の点でした。

  • 数学(幾何)、理科等にも調査対象を広げ整理する点

つくば市立春日学園義務教育学校 

プログラミング教育の内容

つくば市立春日学園義務教育学校では、第8学年を対象に数学の「一次関数」の時間を使ってプログラミング教育が導入されました。

具体的には、比較検討の場面でタブレットを用いて学習支援システムを活用することで、個人の意見をそれまでよりもスピーディに見比べ、より良い解決方法について議論できるようなプログラミング教育が実施されました。

プログラミング教育の成果

つくば市立春日学園義務教育学校で実施されたプログラミング授業の成果として、以下の点が報告されています。

  • 筑波大学協力の下、ラズベリーパイを活用した「つくば市の中学生向けのネットワーク接続、サーバー構築体験イベント」が開催できた点
  • 電子黒板を活用したプレゼンテーションの手引きの作成ができた点
  • 推進校内における学園内プレゼンテーションコンテスト開催し、市内小中学生約1万人の参加を募ることができた点

プログラミング教育の課題

一方で、プログラミング教育の課題として挙げているのは、以下の点でした。

  • 小中学校9年間を通して情報活用能力を含めた21世紀型スキルが体系的に身に付けられるような指導計画を策定する点
  • 小中学校および特別支援教育におけるプログラミング教育をさらに推進し、教科の中でのプログラミング学習の位置づけを図る点
  • 電子黒板を使ったプレゼンテーションコンテストを市外にも拡大し実施する
  • 現在、ICT支援員に生徒と同じPC環境が整っておらず、ICT支援員がアプリの内容を熟知できていないため、ICT機器の基本的な操作スキルの支援のみに留まってしまっている点

神奈川県立住吉高等学校

プログラミング教育の内容

神奈川県立住吉高等学校では、高校2年生を対象に地理歴史科・世界史Aの「ヨーロッパ・アメリカの工業化と国民形成 」の時間を使ってプログラミング教育が導入されました。

具体的には、タブレットを使用して学習した内容をまとめ、他者と協働で課題を作り、電子黒板を使用して生徒と教師の双方向の授業スタイルをとったプログラミング教育が実施されました。

プログラミング教育の成果

神奈川県立住吉高等学校で実施されたプログラミング授業の成果として、以下の点が報告されています。

  • 「LEGOマインドストーム」を導入し、「社会と情報」でプログラミング教育を実践できた点
  • 外部連携機関と共同した情報セキュリティに関する授業を実践した点
  • 外部有識者を講師とした、プログラミング的思考を含む情報活用能力の育成や、アクティブ・ラーニングの視点に基づく授業づくりなどの教員研修を実施ができた点

プログラミング教育の課題

一方で、プログラミング教育の課題として挙げているのは、以下の点でした。

  • 次年度の年間指導計画の作成、教材の開発などに発展的に取組、情報活用能力の体系的な育成を図れぞれに育成すべき情報活用能力を見極めて授業に取り入れていく点
  • 現在、ICT支援員に生徒と同じPC環境が整っておらず、ICT支援員がアプリの内容を熟知できていないため、ICT機器の基本的な操作スキルの支援のみに留まってしまっている点

 

早稲田大学高等学院 

プログラミング教育の内容

早稲田大学高等学院では、高校1年生を対象に社会と情報の時間で「情報社会の光と影」という単元でプログラミング教育が導入されました。

具体的には、ウェブサイトに掲載されている多種多様な情報から適切に主査選択する、コンピュータを使用して発表に使用するスライドの作成といったプログラミング教育が実施されました。

プログラミング教育の成果

早稲田大学高等学院で実施されたプログラミング授業の成果として、以下の点が報告されています。

  • 校内体制として、次年度のカリキュラム作成、教材の作成、他教科や課外活動との連携強化ができた点
  • 環境整備として、電子テキストの導入・使用、無線LAN/クラウド型アプリケーションなどを整えることができた点
  • 大学や企業から協力体制を整えることができた点
  • 公開授業の実施や、情報関連学会への発表ができた点

プログラミング教育の課題

一方で、プログラミング教育の課題として挙げているのは、以下の点でした。

  • 全ての教科・教師がプログラミング教育が実践できていない点
  • 現在は大学運営のネットワーク環境を利用しているので、今後は高等学校独自の環境配備をしていく点

北海道浦河高等学校 

プログラミング教育の内容

北海道浦河高等学校 では、高校3年生の国語・現代文Bの時間を使ってプログラミング教育が導入されました。

具体的には、7グループに2台ずつタブレットを用意し、1台は情報蒐集用、1台は資料作成用に用いたプログラミング教育が実施されました。

プログラミング教育の成果

北海道浦河高等学校 で実施されたプログラミング授業の成果として、以下の点が報告されています。

  • 指導モデルを開発できた点
  • 遠隔授業システムによるプログラミングに関わる授業について、指導モデルを開発できた点

プログラミング教育の課題

一方で、プログラミング教育の課題として挙げているのは、以下の点でした。

  • 教科横断的な情報活用能力の育成について、各校の成果と課題等について検証する必要がある点
  • 各教科の取組を俯瞰する全体計画を作成し、平成28年度に作成した年間指導計画を見直す手段としての有用性を検証する必要がある点
  • 指導モデルの有用性を検証する必要がある点

宮城県多賀城高等学校 

プログラミング教育の内容

宮城県多賀城高等学校では、高校1年生の災害科学・自然科学と災害A の時間を使ってプログラミング教育が導入されました。

具体的には、クローンについて賛成グループと反対グループに分け、タブレットを使って動画を確認したのち、賛成反対の意見をまとめて発表させ、情報が意思決定に与える影響について考察するというプログラミング教育が実施されました。

プログラミング教育の成果

宮城県多賀城高等学校で実施されたプログラミング授業の成果として、以下の点が報告されています。

  • 他教科と学習内容を共有できた点
  • 遠隔授業システムによるプログラミングに関わる授業について、指導モデルを開発できた点

プログラミング教育の課題

一方で、プログラミング教育の課題として挙げているのは、以下の点でした。

  • 各教科・科目における学習目標の定着に寄与する効果を具体的に評価する手法が未だ確立できていない点
  • 教材提示ソフトや動画、シミュレーションを用いた授業を行っていが、その使用が学習効果に及ぼす影響を示す指標が確立できていない点
  • タブレットの活用効果を具体的に評価する手法を探っていくこと

IE-Schoolとは?(小学校のプログラミング教育事例)

IE-Schoolとは、2020年から始まる小学校プログラミング教育過程の義務教育化を踏まえて、事前にプログラミング教育の指導体制や授業設計について現場研究が行われている学校を指します。

IE-Schoolに指定された14校

IE-Schoolとして指定されたのは14校あります。

今回は、そのうち小学校をメインとした6校のプログラミング教育の先行事例をご紹介します。先行してプログラミング教育を実行していく中で見えてきた成果と課題についてもそれぞれの学校別にチェックすることができます。

  1. 一宮市立末広小学校
  2. 立命館小学校
  3. 草津市立志津南小学校/草津市立玉川小学校
  4. 信州大学教育学部附属長野小学校
  5. 福岡教育大学附属久留米小学校
  6. 新居浜市立金子小学校

一宮市立末広小学校 

プログラミング教育の内容

一宮市立末広小学校では、小学校5年生を対象に家庭科の授業で「めざそう 買い物名人」というテーマで、(1)様々な商品情報が入っているタブレットPCを使って、買い物をする際に必要な情報を自分たちで選び、(2)グループで選んだ商品を、タブレットPCを使って発表させる、という授業を展開しました。

プログラミング教育の成果

一宮市立末広小学校で実施されたプログラミング授業の成果として、以下の点が報告されています。

  • 子供達がScratchを使用する中で試行錯誤しながら意欲的に授業に取り組めた点
  • タブレットなどのICT機器を利用することによる教員負担の軽減
  • タブレットなどに不慣れな教員に対してICT支援員がフォローしたことで、ICT機器を利用した授業の展開ができた点

プログラミング教育の課題

一方で、プログラミング教育の課題として挙げているのは、以下の点でした。

  • Scratchなどのビジュアルプログラミング言語を使用せずにプログラミング的思考を育成する方法の検討
  • 年齢に応じた情報モラルの授業展開になっていたかを再検討する必要がある

このように、実際にプログラミング教育を開始するにあたり、「ICT機器への対応」「ICT支援員のフォロー内容」「Scratchなどのプログラミング言語への対応」「情報モラルの教育内容」などが検討事案・課題に上がっていることがわかります。

立命館小学校 

立命館小学校では、小学校6年生を対象に情報の時間で「プレゼンテーション講座」という単元でプログラミング教育を実施しました。

その内容は、(1)一人1代台のタブレットを用いてプレゼンテーションしたい内容についてスライドを作成し、(2)その内容を発表発表させる、という授業を展開しました。

プログラミング教育の成果

立命館小学校で実施されたプログラミング授業の成果として、以下の点が報告されています。

  • 学年ごとに育成すべき情報活用能力の明確化
  • 教員の方に対して、国内外の先行事例の共有と新しいツールを使用することによって、様々な教科で本校独自のプログラミング教育が展開された
  • 文部科学省が公表しているプログラミング教育で育成したい「三つの柱」などを踏まえた年間教育計画の構築

プログラミング教育の課題

一方で、以下のような課題も挙げられています。

  • 本年度に策定した年間指導計画や指導内容などを、外部の評価も踏まえて改善していくこと
  • 外部の評価は、公開授業や学会の発表などを検討している

草津市立志津南小学校/草津市立玉川小学校 

草津市立志津南小学校/草津市立玉川小学校 は、2つのプログラミング教育事例があります。

一つは、小学校5年生を対象に図画工作・総合的な学習の時間で実施した「コマコマアニメーション」と題して楽しいデジタル作品をつくるプログラミング教育を実施しました。

この授業では、一人1台のPCでScratchを用いてアニメーションを作成しました。この作成にあたっては、立命館大学情報理工学部システム学科の協力を得て、分からないことがすぐに聴ける環境配備を行ないました。

二つ目の事例は、小学校6年生を対象に理科の授業で「てこのはたらき」を学ぶ際にプログラミング教育を実施しています。

この授業では、タブレットPCに示したてこの動きに関する予想や結果を、画面共有システムを活用してスピーディに共有して問題解決に役立てたり、タブレットを使用して情報の収集等に使用しています。

プログラミング教育の成果

プログラミング授業の成果として、以下の点が報告されています。

  • プログラミング的思考を学ぶ問題に、繰り返し挑戦することで問題解決能力、想像力、論理的思考が育成された。
  • 教員の方に対して、国内外の先行事例の共有と新しいツールを使用することによって、様々な教科で本校独自のプログラミング教育が展開された
  • 文部科学省が公表しているプログラミング教育で育成したい「三つの柱」などを踏まえた年間教育計画の構築

プログラミング教育の課題

一方で、以下のような課題も挙げられています。

  • プログラミング教育を単発で終わらせるのではなく、継続して行う仕組みづくり

信州大学教育学部附属長野小学校

信州大学教育学部附属長野小学校では、小学校3年生を対象に理科の授業で「ロコの家まで届くかな 光る豆電球」という単元でプログラミング教育を実施しました。

その内容は、豆電球の電気をモデル化するにあたって動画やアニメーションを用いて実施しました。

プログラミング教育の成果

信州大学教育学部附属長野小学校で実施されたプログラミング授業の成果として、以下の点が報告されています。

  • Scratchを使用したプログラミング活動も実施できた。
  • 協働学習システムを使用して、子供達の意見の吸い上げ、整理、比較しながら示せる方法は、様々な教育現場で応用できそうであるという発見。

プログラミング教育の課題

一方で、以下のような課題も挙げられています。

  • 教科学習や総合学習の時間の中で、目標を達成するツールとしての利用が実施できなかった。

福岡教育大学附属久留米小学校 

福岡教育大学附属久留米小学校では、小学校5年生を対象に情報科の授業で「パスワードの管理」という単元でプログラミング教育を実施しました。

その内容は、パスワードの管理方法についてPCを利用して学び、実際にPCを使ってパスワード設定するという内容です。

プログラミング教育の成果

福岡教育大学附属久留米小学校で実施されたプログラミング授業の成果として、以下の点が報告されています。

  • プログラミング教育として身につけさせたい能力や素質を明確にすることができた。
  • 授業を受けた子供達のフィードバックをアンケートを用いて実施することができた。

プログラミング教育の課題

一方で、以下のような課題も挙げられています。

  • どの教科・どの単元にプログラミング教育を関連づけて実施するかが不明確だった
  • 低学年向け教材が未開発な点

新居浜市立金子小学校 

新居浜市立金子小学校では、小学校5年生を対象に総合的な学習の時間・体育科の授業で「命と命でつながろう・けがの防止」という単元でプログラミング教育を実施しました。

この授業では、より良い生活をするための情報収集や、発表の場で使用するプレゼンテーションツールをプログラミング要素として取り入れています。

プログラミング教育の成果

新居浜市立金子小学校で実施されたプログラミング授業の成果として、以下の点が報告されています。

  • プログラミング教育から、相手がいること、相手からフィードバックを受けることを通して、自分の成果物を振り返ることができる点
  • アクティブラーンングの観点から創造的な学習活動にすることができる点。
  • 積極的にICT機器を導入することにより、授業の質向上や教員の意識変革に寄与した。その結果、教員のICT機器の使用率が上がり効果的にICT機器を授業に取り入れることができるようになった点。

プログラミング教育の課題

一方で、以下のような課題も挙げられています。

  • 教員全体で、プログラミング教育の目的などを統一して情報活用能力について具体的にわかりやすくまとめる必要性がある
  • 情報モラルに関する教育内容、その年間計画の策定の必要性がある