プログラミング教育がもたらす効果

プログラミング教育への興味が徐々に広がりをみせています。しかし、「プログラミング教育(プログラミング教室やプログラミング講座)によってどのような効果が見込まれるのか?」を定量的に示した論文や調査結果に触れる機会はあまりないのが現状です。

2020年に小学校教育の場でプログラミング教育がスタートするなか、実際にプログラミング教育(教室や講座)がどのような能力育成に効果を発揮しているのか、プログラミングに関する教育を実施する教育事業者に向けたアンケート結果から定量的な情報をご紹介したいと思います。

1位:新しいものを生み出す創造的な力 92.0%が効果ありと回答

「新しいものを生み出す創造的な力」は、プログラミング教室や講座を行っている教育事業者が「プログラミング教育によって効果が最も高い」と回答しています。

これは、プログラミング人材に対する企業のニーズにおいてはランクインしていませんでしたが、AIやビッグデータで注目されている第4次産業革命によって生じる予測不可能な将来において、必ず必要になる能力の一つということができるでしょう。

2位タイ:自ら学ぼうとする意欲 88.0%が効果ありと回答

プログラムを組み、それを試しながら一つのアルゴリズム(コンピュータへの命令文)を完成させていく作業は、机の上で紙と鉛筆を持って勉強するスタイルと違い、ゲーム感覚で学習できます。

子供が面白く感じる要素が多いことから、自分から学ぼうとする意欲が高まることがわかっています。プログラミング教育を受けた子供の中には、「宿題だと30分も集中できないがプログラミングは3時間も集中していた」という事例があるほどです。

2位タイ:ものづくりの意欲 88.0%が効果ありと回答

パソコン(タブレット)があれば、どこでもいつでも何でも作ることができるため、ものづくりへの興味関心が湧きやすいと考えられます。気軽に、そして楽しく自分の発想をものづくりに反映できるプログラミングは、子供のものづくりへの意欲を高めることが教育現場の声でわかりました。

2位タイ:ものごとをやり遂げる粘り強さ 88.0%が効果ありと回答

プログラミングは、トライアンドエラーを瞬時に判定することができるため、自分のペースで進めることができます。また、想定した動きと実行後の動きに違いがある場合は、「自分の想定した動きにするためには何が足りない(または必要ない)のだろう」と考えるきっかけを与えてくれます。

これらの作業がすべて「自分がやりたいこと」から派生しているため、やり遂げる粘り強さや忍耐力の向上に寄与していると考えられます。

5位:距離、量、回数、見込みなどの数量的な感覚 80.0%が効果ありと回答

座標の概念や、数・回数などを組み合わせてプログラミングを行うため、自然と距離や量、回数などについて考える機会が増えます。その結果、数量的な感覚や予測に関する思考回路が出来上がり、理科に対する得意意識が高くなる効果も見られました。

6位:ものごとを計画的に行う力 76.0%が効果ありと回答

自分のつくりたいものを完成させるために、どのようなステップが必要なのか、そのステップを効率的にコンピュータに実行させるためにはどんな命令文を選択することがいいのかといった、目的を遂行するためのステップを小分けに考える機会が増えます。

プログラミング教育では、それらを整理するという作業を繰り返すため、ものごとを計画的に行う力を育成するのに効果があるという声が聞かれました。

7位:ICTに関する基本的な知識 68.0%が効果ありと回答

プログラミングを通して、コンピュータがどのようにして動いているのかといったICTに関連する基本的な知識を学ぶことができるため、ICT技術を身近に感じることができ、世の中の様々なICT技術に興味関心を持つ可能性を秘めています。

また、テキスト型言語を使ったプログラミング教育を行っている場合は、英単語や命令文の型を繰り返し使うため、英語に対する慣れを確認することができたという声が上がりました。

8位:他人と協力する力 68.0%が効果ありと回答

プログラミング教育を通して、友達同士で教えあったり発表しあう機会が増えるため、他人を協力する力に効果があるという声が上がりました。

また自分の作品と他人の作品を見比べることで、様々なプログラミングに触れるため、他人から教えてもらうことや自分と他人との違いについて気づきを得る機会が多いこともプログラミング教育の特徴の一つと言えます。

9位:言葉を正確に理解し、使う力 64.0%が効果ありと回答

プログラミング教室で製作した作品は、第三者に発表する機会があるため、自分だけが理解できればいいのではなく、他人に理解してもらうためにはどのような表現方法が必要かを考える機会が多くあります。

また、他人の発表内容に触れる機会が増えるため、解りやすい発表方法から正しい言葉の使い方などを吸収する機会が多いのもプログラミング教室の魅力の一つと言えます。

AIがもたらす未来ー自動車産業ー

自動車の自動運転と聞いて、そう驚く人もいなくなってきています。実際に、東京オリンピックが行われる2020年には、公共交通手段であるバスなどの一部は、自動運転で走行されることが検討されており、AI技術の一端を担っている自動運転技術はもう身近な存在になりつつあります。

そんな時流の中、AI技術を使った自動運転技術が今後の自動車産業にどのような影響を与えていくのか、また自動車の産業構造がどのように変貌していくと考えられているのか、について様々なところで議論されています。

なぜなら、日本の産業を支える車業界で業界トップクラスの企業が、その規模を維持できなくなる事態がAI技術(もっと言えば自動運転技術)によって引き起こされる可能性が示唆されているからです。これは、車産業を担っている日本企業、強いては日本経済にとって大きな脅威と言えるでしょう。この脅威を見据えて、今後のビジネスモデルや産業構造の変貌を捉えたものだけが生き残れる・・・そんな時代がすぐそこまで来ているのです。

自動運転が当たり前になるために

自動運転が当たり前の世の中になるためには、いくつかのステップを踏む必要があります。一つは、自動運転でも安全に走行できる技術の革新です。この技術革新を提供する企業がどこになるのか、どの企業がこの市場のポジションを取るのかは、まだ神のみぞ知るところですが、実際にAI技術の最先端で活躍する人の中では、幾つかのシナリオが出来上がっているようです。

安全な自動運転技術の市場を狙う世界の企業

自動車の自動運転が世の中にとって当たり前になるためには、安全な自動運転技術が開発される必要があります。現在、世界中で安全な自動運転技術の競争が起こっており、今まで自動車産業に全く関係の無かったGoogleやFacebook、また自動車業界ではまだ新人にあたるテスラモーターなどが「自動運転技術(AI技術)」のために日々実験を行い、安心安全に使える自動運転技術に磨きをかけています。

これらの技術を「より早く、安全に、安定的に提供」できれば、自動運転技術の市場を取ることができます。そのためには、AI技術を支えるアルゴリズム(コンピューターへの命令内容)×自動車のメカ技術×自動運転に関するデータ量において1番を取っていく必要があると言われています。

AI技術を支える人材の囲い込み

GoogleによるAI人材の囲い込み

自動運転技術を支えるAI技術(よいアルゴリズム)は、それを作れる人材の量・質という要素を欠かすことができません。そこで、Googleでは人工知能を専門とする専門家の囲い込みに余念がありません。現在、Googleでは1000人規模でAI技術者が活躍しています。これは、一つの大学に在学する人工知能の専門家数をはるかに超えています。

FacebookによるAI人材の囲い込み

次に有名な企業はFacebookです。Facebookに在籍する人工知能を専門とする専門家の数は500人単位と言われています。これだけ、世界をリードする企業が新しい産業革命を担う人工知能を支える人材の囲い込みをしている中、日本企業は遅れをとっていると言わざるを得ません。

このようにAI人材の囲い込みの事例を一つとっても、自動運転技術を先行する企業がどこなるのか自ずと決まってくるのでは・・・という話も出ています。いうまでもなく、今まで自動車業界を牽引してきた日本企業の名前が挙がることはありません。これが、どのような打撃を日本に与えるのか、想像するだけで怖くなるほどです。

日本でAI技術者の育成が本格始動

このような背景もあり、日本でも、自動運転技術(AI技術)を飛躍的に向上させると期待されているモデルとなっている「ディープラーニング」に特化したディープラーニング協会というものが2017年6月1日に設立されました。このディープラーニング協会では、AIに関する人材育成、またその人材をマネジメントする経営者層のAIリテラシーを向上させることを目的の一つとして掲げています。これらの目的を達成するために、ディープラーニングに関する検定を行っており、徐々にAI技術が日本の世の中に浸透する活動を進めています。

一般社団法人日本ディープラーニング協会

第4次産業革命とは

第4次産業革命までの歴史

産業革命とは、産業上の飛躍的な生産性アップを可能とする技術革新のことを主に指しています。現在に至るまで第1次〜第3次産業革命がイギリスをはじめ、アメリカやドイツなどで発生し、その後の産業に大きな影響を与えてきました。

現在も、第4次産業革命が進行形で進んでおり、日本だけでなく様々な先進国の経済界で熱い注目を浴びています。

そんな産業革命ですが、これまでの産業革命の歴史について簡単にご紹介します。

第1次産業革命

第1次産業革命とは、イギリスで1700年代後期〜1800年代前期に起こりました。その内容は、それまで手動で行ってきた運搬・製造などの作業を、蒸気機関をエネルギー源として「より早く、より効率的に」実施できるようになった産業革命を指します。

第2次産業革命

第2次産業革命とは、アメリカやドイツを中心に1800年代後半に起こりました。その内容は、動力として蒸気機関ではなく電気を用いたことによって「より早く、より正確に、より安定的に」製造や運搬が可能になりました。

第3次産業革命

第3次産業革命とは、1900年代後半に主に先進国にて起こりました。第3次産業革命を支えた技術革新は、コンピュータの台頭です。コンピュータによって、様々な工程が機械化・自動化されることによって、作業のスピード・量・質において飛躍的な向上を果たしました。

第4次産業革命とは

そして、現在注目を浴びているのが第4次産業革命です。この第4次産業革命を支えている2つの要素は、AIとビッグデータです。コンピュータのネットワーク化で、様々な情報が大量に収集できるようになりました。これらの情報を自動的に分析し、その分析結果によって命令をしなくとも最適な解を瞬時に提供できる技術革新が進められています。これによって、「人間の英知をはるかに超える時代がやってくるのでは?」「人間の仕事がAIに奪われる日が来るのでは?」という憶測が飛び交うほどです。

このように、未来の予測が難しい時代を目前に控えている今だからこそ「生き抜く力」を備えておくことが重要視されています。

プログラミング人材に対する企業のニーズ

民間企業に行った「プログラミング人材に期待する能力」のアンケート調査結果から、期待する能力として回答の多かったものをご紹介します。

1位:論理的思考

回答した企業の60%以上が「論理的思考」を挙げています。論理的思考とは、別名ロジカルシンキングとも言われ、物事の原因と結果を整理して順を追うことによって、相手にわかりやすく説明することを指します。何かを伝えたいと思った時に、思いつくままに話しているといつの間にか何を話したかったか忘れてしまったり、話したい内容からそれてしまうことがありますが、このような状況は論理的思考が生かされていない例として挙げることができます。

2位:表現力

回答した企業の60%以上が「表現力」を挙げています。ここで言う表現力とは、頭のなかで考えたイメージを紙に書き出す表現力や、調べたことをまとめて新たに培われた考え方を第三者に理解してもらいやすいように言葉や表などを使って表現する力も含まれています。

3位:ICT能力

回答した企業の50%以上が「ICT能力」を挙げています。ICT能力とは、タブレットやパソコンを使用する能力や、多くの情報から必要な情報を選び抜く力、そうやって収集した情報をわかりやすく綺麗にまとめ上げるプレゼンソフトの使用能力などが含まれています。プレゼンソフトとして有名なのは、パワーポイントですが、最近は直感的にプレゼン資料を作成でき、作成した資料を生徒同士や先生に共有する仕組みが組み込まれたロイロノート・スクールというソフトが教育現場で広がりを見せています。

4位:協調性

回答した企業の50%以上が「協調性」を挙げています。協調性とは、異なる意見や環境におかれた人同士が感情に流されるのではなく、協力してお互いの意見の良い点・悪い点を話し合いながら、時には譲り合って目的を達成する力を指します。

5位:向上心

回答した企業の45%以上が「向上心」を挙げています。向上心とは、現状に満足することなく、どんな問題や課題があるのかに関心を持ち、それらの問題や課題に対して改善・解決していこうとする気持ちや行動力のことを総合して指しています。